衝撃波とは?

「衝撃波」とは,”音速を超えて伝播する圧力波”と定義されていますが,その様態は様々です.このページでは,当研究室の研究活動で取得された衝撃波について掲載します.

円錐衝撃波 Conical shock

  円柱模型(直径 5.56 mm,ステンレス製,以下模型)を一段式火薬銃をいう装置で加速し,Mach2で自由飛行状態(写真右から左に飛行)の衝撃波と流れ場を色分解型シュリーレン法(Disection-Color Schlieren Method)で可視化計測したものです.「く」の字に見える筋が円錐衝撃波を側面から見たものです.可視化光源には,発光時間 1 マイクロ秒(100万分の1秒)未満で強い白色光を発生可能なNANO SPARK を利用しています.模型は,鈍頭物体であるため,先端の衝撃波は離脱衝撃波(Bow-Shock)となります.斜め後方上下に広がる衝撃波の角度から飛行Mach数を知ることができます.



球状衝撃波 Spherical Shock

  細い糸に接着剤で固定して空中に設置したアジ化銀(起爆薬)の ペレット(質量 10 mg)に対し,小型パルスNd:YAGレーザ光(1064 nm)を照射すると起爆します。起爆から75μs後に撮影したものが右の写真です。撮影には方向指標型カラーシュリーレン法という光学的可視化法を用いています。この方法で撮影すると,密度勾配が色で識別できるという特長があります。アジ化銀の爆発で生じた球状衝撃波や2次衝撃波が明瞭に可視化されています。



衝撃波のMach反射 Mach Reflection

 衝撃波は波動の一種ですので,固いものにぶつかると反射します。その際,衝撃波の入射角度,Mach数,および媒質の物性により,反射の形態が「正常反射」と「Mach反射」に区分されます。写真は,画面左から右へと伝播してきた平面衝撃波(Mach数1.4)が角度15°のくさび表面で反射したものを可視化撮影したもので,単純Mach反射と呼ばれる現象が観測されています。写真中右に,Mach反射であることを示すMach stem(マッハ・ステム)が現れています



高エンタルピ噴流 High-Entharpy Jet

 自由ピストン式衝撃波管開口端から生じた高エンタルピ噴流の構造を方向指標型カラーシュリーレン法で可視化撮影したものです。自由ピストン式衝撃波管とは,圧縮空気によってピストンを駆動し,ピストンが圧縮した高温高圧空気を衝撃波管の駆動気体とする衝撃波管であり,極めて強い衝撃波を発生させることが可能です。生じた噴流は高エンタルピ噴流と呼ばれ,超音速の流れとなります。右の写真から,超音速噴流の特徴がよく理解できます。



開放端から放出される衝撃波と渦輪 Shock waves and vortex ring discharged from a open-end

 入射衝撃波が衝撃波管開口端から放出された後方では,衝撃波の開口端での回折で生じた渦環(写真中のVortex ring)と呼ばれる現象が生じます。右の二枚の写真は,マッハ1.2で伝播する衝撃波が開口端から放出された後に生じた渦環をシュリーレン法で可視化撮影したものです。渦環はドーナッツのような形で,開口端軸に沿って,渦環後方からの流れに後押しされるように伝播します。渦環の伝播様態は開口端形状や入射衝撃波のマッハ数などに影響を受けます。ある研究結果では,渦環を数百メートルにわたり伝播させるのに成功したとの報告があります。

  一方,渦は身近な生活では,騒音の発生源としても有名です。航空機のプロペラから生じる渦や排気管から生じる渦が騒音源として問題となっています。渦の基礎物理を解明することで航空機の騒音低下に寄与できます。渦の生成,崩壊過程は三次元的な現象であり,かつ数値解析的にも熱伝達や粘性を考慮したスキームを用いる必要があり,すべてが明らかにされているとは言い難い分野です